和田光正作品集III・「輝跡」
 
 
 
 
    
 
 

※上記の写真は板場摺箔の工程の一部を紹介したものです。
接着剤を箔を貼る部分全体に、筆で均一に塗りつけ、表より紙や布で薄く接着剤を取り、すぐに箔がシワにならないように貼りつけ、自然乾燥する。光彩箔、曜偏箔などの色の変化を線・面・点の部分に表わす時、箔の味がより一層美しく、近代的な感覚に表われる。
板紙を使って文様を摺り箔粉で表現する。一色毎に彫り分けた型紙を、板に貼った布地の上に置き、型紙の上から接着剤を駒ベラで摺り、箔を貼ったり金彩砂子を振り落としていく。色数と同じぐらいの型紙が必要とされる(通常は一枚〜三〇枚程度だが、複雑な文様になると四〇〇枚から五〇〇枚の型紙を使用する。)型紙の鋭い手彫りの美しさ、金彩箔の輝き、金彩砂子の多彩な光が渾然一体となって、最も豪華に仕上る。
表現したい部分に接着剤を筆で塗り、下面に金網を張った振竹筒の中に入れた金彩箔を、硬目筆で振り落としていく。金網の目は一番〜二五〇番ぐらいある。江戸時代中期の尾形光琳筆の小袖には振落とし金砂子が施されている。現在は一枚の花弁に三色〜六色の金彩箔粉で配色する。
細かい泥金箔を樹脂バインダー(従来はニカワ)などでよく溶いて、筆・タタキ印毛で直接生地に描いていく。また金網を使って振り落としの暈模様を型紙、筆などで描くと、泥金の上品な渋い輝きの美しさを現わす。
立体感を線・面・点に表現する時、粘度の高い接着剤を筒紙や型紙や筆にて、生地の上に塗ってすぐに施す。また、乾燥後に熱または溶剤の入った霧吹きで接着力を戻す方法などで、押箔・振金砂子と同じく、箔・砂子をつけると、刺繍のような立体的な明るい光沢の金彩が現われる。
透明の溶剤・油性合成樹脂と金属粉を混合し、筒紙に入れ、極めて小さな穴のあいた先金をつけて描かれた、柔らかく、細い線の美しさと金属粉の渋さ光は、他の技法とは別に素晴らしい金彩技法である。
鹿皮を張った、切箔台に金箔をのせ、鋭く削った、シノ竹庖丁で、箔を四角に切り、又、細長く短冊状(野毛箔)に切ったものを生地に、接着剤を塗った部分に振り落として独特の切箔模様を現わす。有名な『平家納径』に代表的な切箔、野毛箔が見られるが、この技法を着物に表現すると繊細な美しさがある。
挿し友禅模様を全体にきつい色で染め、その上から接着剤を塗る。押箔を施して自然乾燥のあと、ビロードなどの布で貼った箔を剥がして下の友禅模様を下から、のぞかせるように表現する技法である。金彩の箔の光と、箔によってきつい色がおさえられた色の美しさの合奏で新しい感覚を表わす。
その他、まわた箔・たたき箔・もみ箔・ピース加工・ホットスタンピング箔など独自の表現が可能な技術があります。
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